コーヒー探求ブログ

感動のコーヒーに出逢うために

初心者向け ハンドドリップの蒸らしは本当に必要か

巷に溢れるコーヒー関連の書籍のハンドドリップの説明を見ると、どの本にも蒸らしのことが書いてあります。さすがにこれだけ書いてあるということは必要だから書いてあると思うのですが、蒸らしをしない場合のコーヒーの印象のことが、どの本にも細かくは書いていないので、あえて試して、コーヒーの味わいの違いをあらためて検証してみたいと思います。

 

<使用する豆>

エチオピア グジ ナチュラ

焙煎機   直火

焙煎時間  18分30秒

煎り止め  2ハゼのピーク

味の印象    深煎りの少し苦味のあるコーヒー

      甘い香りがある

      少しえぐみがある

 

<使用する器具>

ドリッパー ハリオV60透過ドリッパー

フィルター ハリオV60ペーパーフィルター(茶)
サーバー IWAKI耐熱ガラスメジャーカップ
ドリップポット ユキワ ステンレスコーヒーポットM-5
カリタ クリーンカットミル
 
蒸らしをしたものと、全く蒸らしをしていないものでどのような違いがあるか検証していきます。
ミルでコーヒー豆20gを挽きます。挽きの具合は中挽きより少し粗め。
電気ケトルで湯を沸かし、ドリップポットにうつす。温度計を挿し90度を確認し、抽出作業にはいります。
 
<蒸らしをしたもの>
90度のお湯を20秒ほどかけて優しく粉にのせていき、そのあと15秒ほど待つ。そこから45秒ほどかけてのの字で抽出していきます。全体で1分20秒かけて120CCとり、抽出を終了しました。
 
<蒸らしをしなかったもの>
90度のお湯をゆっくり粉にのの字で注いでいきこちらも1分20秒かけて120CCとり、抽出を終了しました。
 
<結果>
まずハンドドリップしてみて違いを感じたのが、抽出時の泡の量です。蒸らしをしていないものは、粉に湯を注ぐとモコモコと大量の泡が出てきました。蒸らしをして、ガスがいくらか抜ける工程を省いているのだから、当然なのですが、普段の倍ほどの勢いで泡が出てきたので、抽出しながら、おっ!?と驚いてしまいました。それと蒸らしをしていないものは、泡が邪魔しているのか、粉が湯を吸っているのか分からないのですが、上から湯を注いでいる量に対して、下から出るコーヒーの抽出がゆっくりに感じました。こういった想像以上の反応が出ると、実際に試してみてよかったなと実感します。
蒸らしをしたものは、口に含んだ時に質感を感じ、豊かなコクがあります。味わいに深みがあり、重厚な甘みも感じることができます。同時に少し重い酸味もあり、もともとの焙煎豆にあるえぐみも感じます。このえぐみは冷めた時のほうが強調されるような印象があります。一方蒸らしをしないでハンドドリップしたものは、あっさりしていて、重厚感のある甘みではなく、軽く優しい甘みです。甘い香りもしっかり出ていて熱いうちだと、焙煎豆にあったえぐみもあまり感じませんでした。重い酸味は感じなく、その代わり、蒸らしをしたものより、香ばしさを感じることができました。これは前回
初心者向け ハンドドリップの蒸らしの違いによる味の変化 - コーヒー探求ブログ
にて蒸らしの時間と味の変化を検証した時と同じで、蒸らしにしっかり時間をとると、濃厚な甘みと酸味を感じ、蒸らしの時間を短くすると、それらが消え、どちらかといえば、香ばしさが表に出てくるということと繫がります。しかし、前回蒸らしが短かったものは味にばらつきを感じたのに対して、今回蒸らしを全くしなかったものは味のばらつきを感じません。味のばらつきと蒸らしは関係がないとすると、前回と違うところは抽出の時間ということになります。今回は1分20秒かけて抽出しているのに対し、前回は蒸らしを省いた抽出時間は55秒です。全体の時間は似ていても、抽出時間は35秒の差があるので、当然粉に注ぐ湯の太さには違いがあります。湯が太くなることによって、舌に滑らかさを感じにくくなるとすれば、今度はなぜ蒸らしをしっかりしたものは、抽出の湯が太いのにばらつきを感じないのかということがでてきます。このことから蒸らしに時間をかけたものは、少々勢いよく湯を注いでも、ばらつきを感じることなく、まろやかさをだすことができるという予想ができます。この味にばらつきを感じる部分はこれから検証していきたいです。今のところ、原因がはっきりつかめていないですし、たまたまその時に使用した20グラムの焙煎豆の特徴だったのかもしれません。
前に戻って、結局蒸らしは必要なのかということを考えます。まず蒸らしをすることで成分がしっかり抽出され、混然一体となった美味しいコーヒーをつくることができます。しかし蒸らしをしなければ、コーヒーはまずいかというとそれは誤解であるということが言えます。今回の検証で蒸らしをしないからといって渋みや不快な苦味がでることはなかったので、あくまで成分の抽出が遅れるということだけのような気がします。もったいないといえばもったいないとかもしれませんが、蒸らしをしないコーヒーの味の方が好きな方も多いかもしれません。それなら焙煎豆の量を減らして、蒸らしをしたうえで抽出すれば一緒になるのでは。という考えもありますが、このへんはまたそのうち検証していきたいです。
こうして考えると、コーヒーのハンドドリップは、一見シンプルな作業に見えますが、一つ一つの工程を見つめると、非常に奥が深く、複雑に感じるところもあり、とても興味深いです。今後も少しでもコーヒーのことを理解できるように様々なことを探求していきたいです。